歯周病は、痛みなど無く知らず知らずのうちに進行し、歯を支えている歯肉が炎症を起こし、次第に歯を支えている骨が減ってしまう病気です。
一般的に歯周病は歯周病を引き起こす細菌による感染症であると知られています。
そのためご自身での日々のブラッシングと、ブラッシングで取り切れない歯石などの頑固な沈着物をとるために歯科医院での治療の両方がとても大事になります。
しかしすごく丁寧にブラッシングをされて、歯科医院にもきちんと定期的に歯石取りに行かれているにも関わらず、歯周病の進行が止まらない方もいらっしゃいます。
その方々は歯に対して過剰な力が加わってしまう”咬合性外傷”による歯周病の可能性が高いです。
咬合性外傷とは歯に加わる力によって、歯を支えている歯ぐきや骨が損傷をうけることです。その結果、歯の支えが減っていき歯周病が進行していきます。
こちらは正常な歯周組織です。
歯と歯肉との溝が深くなく、結合力の強い付き方をしています。また歯根先端部のセメント質が厚く、歯根膜の厚みに乱れがありません。
こちらは咬合性外傷を引き起こした歯とその周囲組織です。
過剰な咬合力が加わり歯根に側方力がかかかり、歯根の回転中心を軸に歯が揺す振られます。
その結果、歯周ポケットの増加、歯槽骨頂部で歯槽骨の骨吸収、根尖部での歯槽骨やセメント質の吸収など生じることにより、結果的に歯周病が増悪します。
通常上下左右の歯は合わせて28本あり、それらがきちんと噛んでいると咬み合わせの力は均等に加わり、特定の歯に過剰な力が加わりにくくなっています。
しかし下の図のように特に奥歯が抜けてしまったまま放置していると前歯だけの咬み合わせになってしまいます。
その結果上下の前歯に過大な力が加わり続け、結果その上下の前歯の歯周病の進行が加速してしまいます。
さらに歯は抜けたまま放置していると、その空いたスペースを隣や噛みあう歯が寄ってきてその隙間を埋めようとする性質があります。
その結果、隣の歯は斜めに倒れて噛む力によってさらに傾きが進行し、噛みあう歯は浮いてきて歯の植わりが浅くなっていきます。
このようにまだある程度歯周病の進行が抑えられている場合、過剰な噛み合わせの力が加わっても、若干歯を支えている組織に損傷が生じますが致命的なダメージを受けるまでには長い期間を要します。
一方で歯周病で既に歯を支えている組織の多くを失ってしまうところに過剰な咬み合わせの力が加わると、歯を支えきれなくなり大きく歯が揺すられてしまいます。
その揺すられによってさらに歯を支えている組織の破壊が加速し、歯周病が短期間で増悪してしまいます。
こちらは正常な前歯の上下の咬み合わせです。
正常な咬み合わせでは上の前歯が下の前歯を軽く覆っています。
この状態だと上の前歯に強いストレスがかかることなくスムーズに歯ぎしりを行うことができます。
ところがこのような”出っ歯”(上顎前突)の咬み合わせの場合、上の前歯が下の前歯を深くすっぽりと覆っております。
この状態だと下の前歯で上の前歯を下から強く突き上げてしまい、上の前歯の歯周病が進行しやすい状態です。
また前歯での咬み合わせの引っ掛かりが強いため、スムーズな歯ぎしりがしにくいため、長い時間上の前歯を突き上げてしまうポジションを取ってしまいます。
また重度のケースでは下の前歯が上の前歯の裏側の歯肉を噛んでしまい、その噛み傷によってさらに歯周病を悪くさせてしまいます。
歯の本数が足りないと1本あたりに無理な咬み合わせの力が加わり歯を支えている組織を痛めつけて歯周病が悪化してしまいます。
歯を失った分、入れ歯やインプラントなどを入れて咬み合わせを補うことで、残っている歯に無理な力が加わることを防ぐことが出来ます。
極端に歯を支えている歯茎がなくなってしまったり歯並びが悪く歯と異なる方向から力が加わるなどで歯が噛み合わせの力で大きくゆすられてしまい、歯周病の進行が加速してしまいます。
この咬み合わせの力による歯周病の進行を食い止めるため、隣と歯と接着剤や被せ物などで連結して、歯がゆすられるのを防ぐことがあります。
歯に加わる力をやわらげたり、過剰な食いしばりを抑制するために、マウスピースを作ることがあります。ただしマウスピースには功罪もあり、マウスピースの装着には慎重を要します。こちらのマウスピースのページにその理屈が詳しく書かれているのでご参照ください。