歯を有効活用する矯正

倒れてしまった、根っこだけになってしまった、などで役に立たなくなってしまった歯は年齢が高くなるにつれて多くなる傾向があります。

このような役立たずの歯をそのまま放置しても、その歯を抜いて抜きっぱなしにしても、他の歯への負担が過剰にかかる、きちんと嚙み合わないので歯列・咬合が崩れるといった状況が続き、早く歯を失ってしまう原因となります。

 

以前は少数の歯を動かすために多数の歯に矯正装置をかける必要がありました。しかし近年、アンカースクリューという装置を使うことで非常にコンパクトでより効率的に少数の歯の移動が可能となりました。

1.矯正用アンカースクリューについて

歯を矯正治療で動かすためには動かすための固定源が必要です。

一般的には動かさない歯を支えにして矯正を行いますが、その結果動かしたくない歯までどうしても反作用によって動いてしまいます。

そのような場合、矯正用アンカースクリューを使うことで必要な歯のみ動かすことが可能となります。

 このような特徴から、矯正用アンカースクリューは全顎矯正より部分矯正にとってとても相性のいい治療法です。

 

矯正用インプラント一般的なインプラントと違い、非常に簡単な処置で植えることができます。 また外す際も、ほとんど傷みが無く麻酔を必要としませんのでご安心ください。

2.挺出歯の有効活用

①挺出歯による弊害

今、特別困っていないからといって奥歯を抜けたまま長期間放置すると以下の様々な弊害が生じます。

 

  1. 相手の歯が浮いてしまい、抜けたところに歯を補う隙間が無くなってしまいます。
  2. 浮いてしまった相手の歯が隣の歯と段差が出来てしまい、食べ物が詰まり易くなることで歯と歯の間に虫歯ができてしまいます。
  3. 抜けた歯の一つ手前の歯に噛み合わせの力が過剰にかかってしまうことで、歯を支えている歯ぐきが痩せて歯周病が進行してしまいます。
  4. 抜けた歯の一つ手前の歯に噛み合わせの力が過剰にかかってしまうことで、歯肉との境目付近の歯質に強い応力がかかることにより、歯が砕けていきます。
  5. 抜けた歯の一つ手前の歯に噛み合わせの力が過剰にかかってしまうことで、歯にヒビが入ったり歯が欠けてしまいます。
  6. 抜けた歯の一つ手前の歯に噛み合わせの力が過剰にかかってしまうことで、歯の神経への血液供給が滞って歯の神経が死んで膿が溜まってしまいます。
  7. 1本歯が抜けた分、噛み合わせの垂直圧に耐えられなくなり、抜けた側に下顎が後ろに下がってしまい、下顎が歪んで見えてしまいます。

②挺出歯の圧下と有効活用

従来、このような最も端の奥歯の挺出歯の圧下を矯正治療で行うのはほぼ不可能でした。

 

しかし矯正用アンカースクリューの登場で、とてもコンパクトな装置で挺出歯の圧下を行うことが可能です。

 

 挺出した歯の圧下を行うことで、噛み合うべき相手の歯を入れるスペースが生じます。

 

この生じたスペースにインプラントなどで歯を補うことで、圧下後の後戻りが防止されるだけでなく、その1本手前の歯を保護することができます。

②傾斜歯の有効活用

傾斜したままの歯は、汚れが溜まりやすく歯に無理な力もかかってしまうため、虫歯や歯周病などにとてもなりやすいです。また失った歯を補うための支えとして使う場合も、傾斜したままでは用途も限られ長持ちしません。そこで傾斜した歯をまっすぐにすると、その歯が長持ちするだけでなく失った歯を補う治療の幅も広げることができます。

ブリッジアップライト・アップライト症例
従来の矯正装置とインプラント矯正

*矯正用インプラントは一般的なインプラントと違い、非常に簡単な処置で植えることができます。 また外す際も、ほとんど傷みが無く麻酔も必要としませんのでご安心ください。

③残根歯の有効活用

健康な歯が虫歯などでボロボロに崩壊して歯根だけになってしまうと、その歯の周りの歯肉も壊れてしまい、このままでは差し歯が出来ない状態で抜歯することになってしまいます。

このような抜歯するしか無いような歯も、矯正治療によって歯を浮かせる「挺出]を行うことによって保存できる場合があります。

さらに一度壊れてしまった歯肉も、挺出された歯の表面の歯根膜の力によって健康な歯肉に回復することができます。

残根歯に対して無理に差し歯にしてしまうと以下のようなトラブルを生じます。

  1. 歯肉の炎症が改善せず、歯肉出血や歯周病の進行が生じやすくなります。
  2. 被せ物の境目で早くに虫歯になってしまいます。
  3. 歯根が折れてしまいます。

このように残根状態のままで差し歯を行っても歯冠と歯根の比率が悪く安定感の無い差し歯になります。また歯冠の立ち上がりも極端にくびれた形になり、理想的な噛み合わせの面を作ることが出来ません。

一方、残根歯を挺出させることで歯冠と歯根の比率の改善が出来、歯冠の立ち上がりも適正で理想的な噛み合わせの面を作ることが出来ます。さらに歯根膜の力で失われた歯を支えている歯肉や骨も再生することが出来ます。

従来、このような端の歯を挺出させることは困難でしたが、矯正用アンカースクリューを用いることでシンプルな装置で挺出を行うことが出来るようになりました。

矯正用アンカースクリューの注意点

  • 叢生(乱くい歯)は歯が並ぶスペース不足によるもののため、部分的な歯の移動ではスペースの融通がつけられることが無く、一般的なマルチブラケットの併用が必要です。
  • 上顎前突(出っ歯)や反対咬合(受け口)などの多くは、上下の噛み合わせを大きく変える必要があるため、一般的なマルチブラケットの併用が必要です。
  • アンカースクリューは気軽に植立できる利点がある一方、非常に脱落しやすい欠点があります。よって脱落による再植立が必要になる場合があります。


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