よく子どもの歯並びについて「様子を見ましょう」、と歯医者さんからも保護者の方からもよく耳にします。
果たして本当に様子を見ているだけでいいのでしょうか?
それとも積極的に矯正治療などを行わないと、将来取り返しのつかないことにならないでしょうか?
ここでは矯正治療の頻度が最も高い”叢生”(乱くい歯)について説明します。
叢生(乱くい歯)とは歯のサイズに対して歯が植わる歯ぐきのサイズが足りず、歯がきれいに揃わずガタガタに生えてしまうことで、最も頻度が多い歯並びの異常です。
歯が真っすぐきれいに生え揃うにはそれだけのスペースが必要になります。
もしそのスペースが足りない場合、狭いスペースで歯が生えるために歯並びに段差が生じます。
すなわち”叢生”(乱くい歯)とは歯の配列スペース不足が主たる原因となります。
こちらは乳歯が隙間なくピッチリきれいに揃って生えています。
また上の前歯が下の前歯を大きく覆っています。
一方、こちらはいたるところが隙間だらけで乳歯が生えています。
またほとんど上の歯と下の歯の先端同士で前歯が噛み合っています。
さて、皆様どちらが正常だと思われますか?
正解は下の段です。
正しい乳歯列は以下の要件に該当します。
上段のケースは乳歯列が隙間なくピッチリ生え揃っており、下の前歯が上の前歯で覆われており一見すごくいい歯列に見えます。
しかし何もせずに永久歯の萌出が完了すると、スペース不足から歯並びがガタガタになります。
下段のケースは隙間だらけの乳歯列で、下の前歯の先端が上の前歯の先端付近で接触しており、一見良くないと見えます。
しかしこういったケースでは特に何もしなくても永久歯に全て生え変わると、理想的な歯並び・噛み合わせになります。
乳歯から永久歯に生え変わる際に”リーウェイスペース”と呼ばれる生理的に生じるスペースがあります。
このスペースは側方歯群と呼ばれる前から3番目・4番目・5番目の3本の歯の幅の総和が永久歯より乳歯の方が大きいことで生じるスペースです。
このリーウェイスペースが教科書的には上顎で左右各々0.9mmずつ、下顎で1.7mmずつとされています。
しかし実際、上の歯は巨大化傾向にあり現在では上顎のリーウェイスペースは殆ど無いのが現状です。
上段は乳歯列の時に隙間なくピッチリ生えている状態です。
通常、上顎はリーウェイスペースがほとんど期待できないため、永久歯に生え揃うとこのように歯並びが重なってしまいました。
一方、下段も乳歯列の時に隙間なくピッチリ生えている状態です。
下顎はある程度リーウェイスペースが期待できるため、そのスペースを無駄に消費しないよう定期健診を続けながら適切な対応を行った結果、永久歯がきれいに生え揃うことが出来ました。
このように上手に管理を行っていけば将来矯正治療を希望された際、上だけで済むこともあります。
上段は先ほどお示しした乳歯列の時期に、歯が隙間なくピッチリ揃っています。
当方で早期の矯正治療の必要性を説明いたしましたがご理解いただけず、永久歯列になると予想通り不揃いな歯並びになってしまいました。
下段は隙間が無い乳歯列のお子様です。
早期の矯正治療の必要性を説明し、ご家族の理解を得ることが出来ました。
早期に矯正治療を行うことで、さほど大掛かりなことを行うことなく、比較的簡単な治療で済ませました。
現在ではきれいな永久歯列になっています。
このように叢生の程度が重度でないケースであれば、簡単な治療で歯を削らず、歯を抜かず、きれいな永久歯列を早期の矯正治療で得られることがあります。