顎関節症は「顎関節症とは」のページで、下顎が後ろに下がりすぎることが原因で、この下顎が後ろに下がるのはそうせざる得ない噛み合わせだと説明しております。
しかしこの顎関節が不調を起こす噛み合わせを生じさせたのは以下の理由によります。
このうち遺伝的要素・外傷的要素・成長発育過程の問題に関しては、過去に生じた問題なのでなかなか根本的な解決は困難ですが、悪い習癖の改善は今からでも遅くありません。
欧米人の噛み合わせ・歯列・骨格・顎関節の構造では、下顎は頭に対して蝶つがいの動作が主体で咀嚼運動(噛んですり潰す運動)を行います。
この構造はもともと硬くて大きなものを垂直的に咬み切ることに適しています。
一方、日本人の噛み合わせ・歯列・骨格・顎関節の構造では、下顎は上下の動作より左右の水平的な動きか主体で咀嚼運動を行います。
この構造は小さなものを水平的にすり潰すことに適しています。
以上から、欧米型の食生活は日本人にとって顎関節を壊してしまう原因となります。
またこの欧米型食生活を成長発達時期から続けていると、顎関節のみならず噛み合わせ・歯列・顎骨の発育にまで悪影響を及ぼします。
日頃から、和食中心の食生活を心がけましょう。
姿勢は全身の骨格に影響を及ぼすだけでなく、顎関節・噛み合わせ・歯列にも大きく関与しています。
猫背はもちろんのこと反り腰も悪い姿勢として様々な悪影響を及ぼします。
姿勢によって顎関節や噛み合わせに影響がでる理由として、このように口腔は喉の筋肉を介して、呼吸を行っている胸部と繋がっているからです。
逆に口腔の悪い要素によって姿勢に悪影響を及ぼすこともあります。
良い姿勢とは、脊椎が弱いS字湾曲をしており、足圧の重心が踵よりつま先方向にある状態です。
この状態だと下顎は後ろに下がりすぎません。
舌も口腔内で良い位置を保っています。
逆の見方をすると舌の位置で身体の姿勢まで変えてしまうことがあります。
こちらは多くの方が悪い姿勢の典型だと思われる猫背です。
猫背になると頭と骨盤は前方回転します。
脊椎のS字湾曲は乱れ、胸椎は著明な後湾を示し、息が吸いにくい状態になります。
頚椎は自然な湾曲が失われストレートネックの状態になります。
下顎は後ろに下がってしまいます。
舌は口腔内で低い位置に下がってしまいます。
もう一つの代表的な悪い姿勢が反り腰です。
反り腰になると頭と骨盤は後方回転します。
脊椎のS字湾曲は乱れ、腰椎は著明な前湾を示し、息が吐きにくい状態になります。
頚椎は自然な前湾が失われ、後湾の状態になります。
下顎は後ろに下がってしまいます。
舌は口腔内で過剰に高い位置に上がってしまいます。
顎関節症治療の弊害のページで詳しく説明しておりますが、歯の噛み合わせの面に装置が介在する一般的なスプリント療法は、元々下顎が後ろに下がって顎関節症が発症してるのに、このスプリントによって長期的にはさらに下顎を後ろに下げてしまう可能性があります。
よって顎関節症の方には噛み合わせの面を覆うマウスピースは基本的に使うべきではありません。
下顎が後ろに下がってしまうことと身体の姿勢は密接に関係しています。
この下顎と身体の姿勢を維持する体幹とをつないでいるのが舌です。
この舌の位置が不良なままでは下顎と姿勢のバランスを保つことが出来ません。
よって顎関節症の方に用いるマウスピースは舌の位置を正しく導く機能が必要です。
マウスピースを用いた治療は最低でも就寝時間中は毎日必ずマウスピースの装着が必須です。
そのため大きくて違和感の強い装置だと、睡眠中に苦しくて無意識に外してしまうことも少なくありません。
さらに症状の重い方は1日中装着していただく場合もあるのでなおさらです。
このような理屈を組み込んだマウスピース治療を当院では行っています。
噛み合わせ・歯並び・顎関節・姿勢などの要素を総合的に判断して、SPP (Super Palatal Plate)、SLP (Sub Lingual Plate)、Michaelという3つの装置を使い分けて提供しています。
この装置は食事中に装着することも出来るため、欧米型の咀嚼運動を日本型の咀嚼運動にその装置でスイッチさせることができるため、食事による顎関節への負担を改善することも出来ます。
これらのマウスピースは日本歯科大学名誉教授の丸茂義二先生に直接指導を受けた歯科医院のみ製作・提供が可能なものです。
上記のマウスピースには顎関節症以外にも以下の効果があります。
*顎関節症治療に於いて当院では健康保険での治療は行っておりません。