インプラントを希望して歯医者さんに相談したら、「骨がないのでインプラントが打てません」と言われたり、自分で「私は骨が少ないからインプラントは無理だわ」とあきらめてしまっていらっしゃる方も多いかと思います。
でもあきらめないで下さい。歯科医療の進歩に伴って、あらゆる治療法を駆使することによって、悪条件でもインプラントを打つことが可能になってまいりました。
確かに骨が十分でないケースは難易度が高く、専門の研修を受けた者しか扱えない治療法ですが、当院では既に必要十分のスキルを身に着けていると共に、歯科用CTやピエゾサージェリーの完備で幅広く対応しております。
やや大掛かりな処置になりますが、痛みについては無痛注射器と筋肉内鎮静法によって、安心してインプラント手術を受けていただける体制を整えております。
具体的な術式を順にご説明いたします。
上顎の奥にインプラントを打つ際、上顎洞と呼ばれる骨の空洞が近接し、骨の厚みが確保できない場合に用いる手術法です。少量の骨増生に適した術式で、大量の骨増生が必要な場合は下記のサイナスリフト法が適応になります。
インプラントを打つ部位の歯肉を切開します
インプラントを打つ部位の骨をドリルでほんの少し削ります
オステオトームと呼ばれる専用の器具で徐々に上顎洞の底を持ち上げていきます
持ち上げた上顎洞の底と顎の骨との隙間を人工の骨を移植して満たします
上顎洞を十分持ち上げられた後、通法どおりインプラントを埋入し、生体と結合するまで待ちます
このように、そのままではインプラントが打てないケースでもソケットリフトを行うことによって、インプラントが行えます。
ソケットリフト法と同じく上顎の奥にインプラントを打つ際、上顎洞と呼ばれる骨の空洞が近接し、骨の厚みが確保できない場合に用いる手術法ですが、大幅に骨を増やす必要がある場合はこちらの術式が適応となります。
上顎洞の底を大きく持ち上げるため、インプラント埋入予定の歯肉を頬っぺた側に開きます。
上顎洞に接している頬っぺた側の骨を窓開けし、上顎洞の底にへばりついている粘膜を丁寧に剥がします。
上顎洞の持ち上げた粘膜の大きな隙間に、人工骨などを詰めていきます。
窓開けした骨をもとに戻し、スムーズな骨の再生をさせるために特殊な膜でバリアーします。
開いた歯肉をもとに戻し、縫合してしばらく骨になるまで安静を保ちます。
移植された人工骨などが骨に置き換わった時期に、通法に従ってインプラントを埋入します。
このようにほとんど骨の厚みがないきびしい条件でも、サイナスリフトを行うことによって通常のインプラントを打つことができます。
インプラントを打とうと思う場所の骨が少なく、このままではインプラント体が大きく露出してしまう場合に、特殊な遮蔽膜を使って骨を増やす手術を併用することによって、適切な部位にインプラントを埋入することが出来ます。
インプラントを打つ場所の歯肉を開くと、骨がくぼんでいてこのままでは適切な位置にインプラントを打つことができません。
骨がくぼんだ場所に、人工骨などの移植剤をのせていきます。
移植剤を固定し、骨の再生を促すために遮蔽膜を貼り付けます。
骨ができた段階で通法どおりインプラントを埋入します。ただし最近では材料や術式の進歩によって、GBR手術とインプラント埋入手術を同時で行うことが多くなりました。
このように骨がくぼんでしまってインプラントを適切に埋入できない骨も、GBR法を行うことによって骨のボリュームアップが得られ、理想的な場所にインプラントを埋入することができます。
サイナスリフトやGBRなどで新たに骨を増やす場合、代用骨を使いますがこれだけでは骨を新しく作る作用が乏しく、完成した骨に置き換わるまでに非常に長い時間がかかってしまいます。
そこでご自身の血液を採取し、その血液から骨の再生を促す成分を濃縮して用いることによって、治療期間の短縮や手術創治癒の促進が得られます。
おおよそ手術の2時間前に採血を行います。
専用の遠心分離器で骨の再生を促す成分を濃縮します。
代用骨と混ぜるなどして使用します。
インプラントを埋入するにはある程度骨の幅がなければなりません。もし仮に幅が不足している骨に無理やりドリルで穴を開けてインプラントを埋入しようとしても、大きく骨を崩してしまうことになり、仮にインプラントを埋入できたとしても理想的な位置からかけ離れた位置にインプラントが存在することとなり、長期的な安定性に不安を残すことになります。
そこで大口式を用いることで極力ドリルの使用を減らし、優しく骨を押し広げながらインプラントを埋入する穴を広げていく方法を用いることで、細い骨でも骨を崩さずにインプラントを埋入します。
この大口法は同時にあの不快なドリルをほとんど使用しないため、術中の苦痛もかなり緩和されます。
インプラント埋入手術を行う際、ソケットリフトやGBRのような骨を増やす手術を行った場合、手術後の腫れなどが大きくなるとともに治療期間の延長も生じてきます。また手術の成功率も元々骨が十分にある個所への埋入と比較して劣ります。
一方、元々骨のある場所を探して傾斜して埋入するには、あらかじめ術前にシュミレーションを行った上で、そこからブレなく埋入しないと神経や血管などを損傷してしまう可能性があります。そこでCT・コンピューターシュミレーション・手術用ガイドを用いることによって安全かつ正確に傾斜埋入を行うことができます。
まっすぐにインプラントを埋入しようとすると上顎洞と呼ばれる鼻の空洞に突き抜けてしまいます。
このように傾斜すればしっかりした骨のあるところに埋入できますが、少しでもずれてしまうと関係ない組織にインプラントが突き抜けてしまいます。
そこで安全に傾斜埋入を行うためにまずCT撮影を行います。
CTの画像データをインプラント手術シュミレーションソフトに移し、使用するインプラントの種類や埋入角度などを決定します。
このシュミレーションソフトで決定した手術プランが正確にできるよう、手術ガイドを作成します。
実際に手術ガイドを用いてインプラント埋入を行います。
このように正確に傾斜してインプラントが安全に埋入できました。